顎関節症とは 顎関節症は、口を開け閉めするあごの関節やあごを動かす筋肉(咀嚼筋)に異常が起こり、「カクっと音がする」「口が開きにくい」「あごが痛い」「痛みがあって口が開かない」「食べ物が噛みにくい」といった症状が現れる病気です。原因としては、大きく4つの習慣が関わっています。

  • 激しい運動による食いしばり
  • 歯ぎしり
  • ストレス
  • 歯列接触癖(TCH)

歯ぎしり・食いしばりは歯にも強い力がかかりますが、同様にあごの関節や筋肉にも大きな負担がかかります。関節には常に強い力がかかり、筋肉も常に過度な力が加わり続けると、負荷がかかり続けて顎関節症につながります。歯列接触癖(TCH)とは、食事をしている時以外は上下の歯の間にわずかにすき間が開いているのが普通の状態ですが、意識せずに歯をかみ合わせることが癖になっている場合もあります。これを歯列接触癖(TCH)といい、顎関節症の方の約8割にこの癖があるといわれています。ストレスがかかると、歯ぎしりや食いしばりにつながり、顎関節症の要因となります。

顎関節症のタイプ

  • 咀嚼障害を主とするもの:側頭筋や咬筋という食事する時や口を動かす時に大切な役割をする筋肉に炎症が起きるタイプです。「頬が痛い」「頬が腫れる」「我慢すれば口は開くが痛みがある」といった症状がある場合が多く、過度な筋肉の緊張が原因です。症状を改善するためには、筋肉を休ませることが大切です。対処法としては筋肉マッサージが有効です。
    • 筋肉マッサージの方法
      1. 人差し指と中指を痛みが出ている部分(こめかみや頬と耳の間)に手を当てます。
      2. 500円玉くらいの大きさで円を描くようにして筋肉をほぐします(痛くない程度の力で行いましょう)。
  • 靭帯や関節円板の損傷:関節には骨だけでなく、「軟骨」「靭帯」「関節包」などの組織があり、これらの組織に負荷がかかり傷むタイプです。筋肉に炎症が起きるタイプと同様に、我慢すれば口を開けることは可能ですが、口を開けると痛みが出ます。関節に炎症が起きている間はできる限りあごを休める必要があります。硬いものを食べたり強く噛むと負担になるため、柔らかい物を食べるようにしましょう。
  • 顎の動きの異常:正しい顎関節は、口を開ける動作に応じてクッションの役割をする「関節円盤」がありますが、このクッションがずれてしまうと、口を開ける際にカクカクした音やポキっとした音が鳴ることがあります。また、口を開けようとしても引っかかって開けられない「開口障害」という症状が出てきます。音が出ているだけなら経過を観察しますが、開口障害の症状が出ている場合は、骨が変形することにもつながるため、早めに歯医者で受診して定期的な検査を受けましょう。
  • 顎関節の摩耗、すり減り:関節円盤が前にずれ、加齢などで軟骨が薄くなると骨同士が当たってしまい、やがて骨が変形していく「顎変形症」を引き起こします。関節円盤がずれているため、口を開ける際の引っかかりや痛みを生じることもあります。また、骨同士がこすれてざらざらした音が鳴ることもあります。女性ホルモンが減少すると軟骨のすり減りに影響が出るため、女性ホルモンが低下する中高年に多いタイプの顎関節症です。骨に影響を与えているため、放置すると食事をすることも困難になります。この段階では早めに治療が必要で、すぐに歯医者を受診しましょう。

対処方法

  • スプリント治療:スプリント療法とは、患者に合ったマウスピースを作製して使用する方法です。顎関節の負担の多くは「歯ぎしり」「食いしばり」による過度の力が原因であり、無意識に行っていることも少なくありません。就寝中の歯ぎしりは自分でコントロールすることが難しいため、寝ている間にマウスピースを装着して顎関節をリラックスさせます。マウスピースは上か下の歯列をすべて覆う形で、顎関節の負担軽減や咀嚼筋の緊張緩和を目的としています。
  • 薬物療法・理学療法:薬物療法では、あごの痛みを抑える薬を服用します。また、筋肉の緊張が強い場合にも薬を服用します。痛みが強く出ている急性期には薬で痛みを抑え、症状が緩和したら根本的な原因を改善するために理学療法やスプリント療法を行います。
    • 開口ストレッチ・あごの運動訓練:口が開けにくい症状がある場合に行う治療法で、指の力を借りて口の開閉を無理のない程度にストレッチします。
    • 冷温湿布法:顎関節部分に湿布を貼り、血行を促進しながら痛みを和らげる治療法です。
    • 低周波療法:機械を使用して皮膚の上から電気刺激を与え、筋肉をマッサージする治療法です。筋肉の収縮を引き起こし、筋肉のバランス調整を行います。
  • 生活習慣の改善
    • あごを安静に保つ:あごをリラックスさせ、食いしばりに気づいたら深呼吸をしてリラックスしましょう。痛みが出ている場合には、やわらかい食事を心がけ、野菜スープやおかゆなど噛む必要が少ないものを摂取し、硬い物は控えます。
    • 大きな口の開閉は控える:食事や会話をする際に大きな口を開けることは控え、あくびをする際もコントロールが必要です。
    • 温湿布をする:急性の強い痛みには冷湿布、慢性的な痛みには温湿布を使用し、血行促進で筋肉をほぐします。ただし、痛みが出る場合にはすぐに中止してください。
    • 筋肉のマッサージをする:口を開けた時に突っかかる感じや、頬にだるさを感じる場合には、頬の筋肉をマッサージし、血行を促進して痛みを軽減します。
きど歯科