2026.05.28
愛知県安城市のきど歯科院長、木戸亮太です。
しばらくぶりに来院された患者さんから、先日こう聞かれました。
「先生、半年くらい来られなかったんですが…まだ大丈夫ですよね?歯磨きはしっかりしてるつもりなんですけど」
このご質問、毎月のように耳にします。そして、患者さんに悪気はまったくないんです。「忙しい」「自覚症状がない」「歯磨きは毎日している」、この3つが揃うと、誰でも「まだ大丈夫」と思ってしまいやすい。これは自然なことです。
ただ、現場で日々お口の中を見ていると、メンテナンスから離れた期間に、いくつかの変化が静かに進んでいることが分かります。今日は、メンテナンスに通わなくなるとお口の中で何が起きているのかを、現場の歯科医師として整理してお伝えします。
先に結論を書きます。
メンテナンス期間が空くと、お口の中ではおもに3つの方向で状態が動いていきます。
それぞれ別のメカニズムなので、3つ全部が一度に起こることもあれば、人によっては1つだけが進むこともあります。順番に説明していきます。
ここはとても誤解が多いところです。
歯石は、歯ぐきの周りにつくプラーク(細菌の塊)が、唾液中のミネラルとくっついて石灰化したものです。お口の中の環境にもよりますが、しっかりクリーニングしたあとでも、最速1週間前後で再付着が始まることが知られています。
ですので「前回しっかり取ってもらったから当分大丈夫」というわけではなく、付き続けるものを定期的に外しに行く、という考え方の方が現場の実感に近いです。
そして、歯石は表面についているだけではなく、歯ぐきの中の見えない部分にも入り込んでいることがあります。この部分には歯周病菌が住みつき、毒素を出し続けます。歯磨きとフロスでも届かないため、ここに対しては定期的なクリーニングで物理的に外す、という対応が大事になります。
2つ目は、ふだんあまり話題にならない部分です。
歯と歯の噛み合わせには、ある程度決まった「動きの型」があります。とくに大事なのが、犬歯(上下の3番目の歯)が左右の動きを担う「犬歯ガイド」というかたちです。この型がそろっていない場合、奥歯に横方向の力がかかりやすく、ストレスや疲労が重なると、夜間の歯軋り・食いしばりで歯に大きな負担がかかります。
これがいわゆる「咬合性外傷」と呼ばれる状態で、
といった形で現れることがあります。痛みが弱いまま進むことが多く、ご本人が気づきにくいのが特徴です。メンテナンス期間が空くと、この変化を歯科側がチェックする機会も減ってしまいます。
3つ目は、季節ごとの要因です。
花粉症の時期、お口の中で何が起きているか、意外と知られていません。
花粉症で鼻が詰まると、自然と口呼吸が増えます。口呼吸が増えると、お口の中が乾燥し、唾液による洗浄作用や殺菌作用が落ちます。さらに、花粉症対策のお薬の中には、唾液の分泌そのものを抑える方向に働くものもあります。
この状態が数週間〜数か月続くと、ふだんと同じように歯磨きをしていても、歯ぐきからの出血や腫れが収まりにくくなることがあります。とくに、もともと歯周病をお持ちの方では、この時期に状態が動きやすいです。メンテナンスでこの時期の変化を拾えるかどうかは、その後の状態の戻りに影響します。
ここで、現場でよく出会う2つの誤解を整理しておきます。
誤解①:歯石を一度取れば終わり、と思われがちですが
これは違います。先ほどお伝えした通り、歯石は最速1週間前後で再付着が始まります。一度取って終わり、ではなく、付き続けるものを定期的に外す、というのが現場の感覚です。
誤解②:痛くなってから行けばいい、と思われがちですが
これも避けたい考え方です。痛みが出る段階というのは、すでにある程度進んだ状態であることが多いです。とくに歯周病は、初期段階では痛みが出にくく、5mmを超える深い歯周ポケットがあるかたは、その後ゆっくり進んでいきやすい傾向があります。気づいたときには対応が大きくなる、というケースが少なくありません。
ここからは、きど歯科での考え方をお伝えします。
うちの医院では、メンテナンスは「短くまとめて頑張る」よりも「細く長く続ける」方を大事にしています。
具体的には、
という流れです。歯石を取って終わり、ではなく、歯石を取りながら、歯周病菌の出す毒素・噛み合わせの過大な負荷・呼吸の癖、この3つに対して並行して手を打っていきます。
私が大事にしているのは、ここなんです。
痛くなってからまとめて治療する方が、ご本人にとっても、お口にとっても、いちばん負担が大きいです。
これは私の口癖でもあります。痛みが出てから動くと、削る量も、通院回数も、お金も、心理的な負担も、全部いっぺんに増えてしまいます。一方、軽い段階で短い時間のメンテナンスを続けていただくと、一度あたりの負担は本当に少なく済みます。
ここでは、現場の歯科医師としていちばんお伝えしたいことを書きます。
「自覚症状がないから」と、メンテナンスを切ってしまうことです。これがいちばんもったいないと、私は思っています。
歯ぐきの中の見えない歯石、噛み合わせの外傷、季節要因による細菌の活動性──これらはどれも、ご本人の自覚症状がほとんど出ません。鳴るチェックもできないため、「症状が出てから」を判断基準にしてしまうと、現場で対応するときには選択肢が減っていることが多いです。
すでに当院で診させていただいているかたは、これまで通り、ご自身の周期(多くの場合は3か月〜半年)でのご来院を続けてください。
しばらく間が空いてしまったかたは、「久しぶりですみません…」と言いづらいかもしれませんが、それを気にする必要はまったくありません。むしろ「今のうちに見せに来てくださって良かった」と思う場面がほとんどです。気にせずお戻りください。
これからかかりつけを持とうとされているかたは、いまの状態をご自身の医院で一度ご相談ください。当院でもご相談を伺うことは可能です。
Q. メンテナンスは何か月ごとがいいですか?
A. お口の状態によります。5mm以上の歯周ポケットがある、噛み合わせの偏りがある、花粉症などで季節要因が大きい、これらに当てはまるかたは、おおむね2か月以内ごとをおすすめしています。
Q. 半年〜1年あいてしまいました。受診しづらいです。
A. まったく気にする必要はありません。間が空いた分、いまの状態を一度確認するメリットが大きいです。お気軽にご予約ください。
Q. 自宅でのケアを頑張れば、メンテナンスの頻度は減らせますか?
A. ご自宅でのケアは本当に大事です。ただ、歯ぐきの中の見えない部分・噛み合わせのチェック・季節要因の評価は、ご自宅では難しい部分です。両方を組み合わせるのが、結果としていちばん負担が軽い方法です。
メンテナンスから離れている期間に進む変化は、おもに3つの方向(歯石の再付着・噛み合わせの外傷・季節要因)です。重要なのは、
この3点です。
きど歯科では、軽度な段階でのクリーニング、噛み合わせのチェック、季節ごとの変化の記録を含めた、丁寧なメンテナンスを大事にしています。
しばらく間が空いてしまったかたも、これからかかりつけを持とうとされているかたも、お気軽にご相談ください。次の定期検診を、一緒に組み立てましょう。
📍 きど歯科(愛知県安城市)
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