2026.05.14
愛知県安城市のきど歯科院長、木戸亮太です。
メンテナンスに通っている小学生のお母さんから、先日こう言われました。
「先生、学校健診で『C1』って書かれた紙が来たんですけど…うちの子、ここでは虫歯ないって言われてましたよね?」
この一言、私はとても大切なご質問だと思っています。なぜなら、まったく同じ疑問を、毎年5月から6月にかけて本当に多くの保護者の方からいただくからです。当院では年間およそ1,000名の小児来院があり、そのうち小学生は600〜700名ほど。学校健診の紙をきっかけに不安になる親御さんは決して少なくありません。
今日は、学校歯科健診で「CO」「C1」「C2」と書かれた紙を子どもが持ち帰ったとき、保護者の方がどう動けばいいかを、現場の歯科医師として整理してお伝えします。
まず先に結論を書きます。
CO・C1・C2は虫歯の進行段階を表す記号です。文部科学省「歯・口の保健管理の実際」にも段階的に記載されています。
CO(シーオー、要観察歯)は、まだ穴は空いていません。エナメル質の表面が白く濁っている段階で、生活習慣の見直し──ブラッシング、間食の整理、フッ素応用──で戻せる可能性があります。
C1は、エナメル質に小さな穴ができた段階です。多くの場合、痛みはほぼありません。
C2は、象牙質まで進行した段階です。冷たいものなどでしみることがあります。
つまり「C1」「C2」と書かれていても、それぞれ意味も対応も違います。「C1だから削る」「C2だから即治療」と一律に判断するものではない、というのが大前提です。
ここがいちばん混乱の元です。私自身、診療所で日々診ていて、これはきちんと説明しないと納得いただけない部分だと感じています。
学校歯科健診は、歯科医院のように個室・診療チェアー・大きな無影灯・拡大鏡を使って診る場ではありません。教室や保健室の限られた環境で、短時間で大勢の児童をチェックする集団健診の形です。歯と歯の間や奥歯の溝など、歯科医院ならじっくり確認できる箇所も、健診環境では確認しきれないことがあります。明らかに穴が空いていればC2と判定されますが、COのように微妙な所見は、見方によって判定が揺れることもあります。
そして、もう一つ大事なことがあります。
当院では、メンテナンスでお口を診させていただいているお子さんについては、C1やCOがあってもすでに記録しており、以前の受診時にもお伝えしていることが多いです。ただ、お子さんのお口の話は数か月単位の記憶になることもあって、保護者の方がそのときのご説明を覚えていらっしゃらない、というのはまったく自然なことです。
ですので、「健診で初めて言われた虫歯」のように見えても、実は当院ですでにマークして経過を見ていた歯、ということは少なくありません。
ここで、現場でよく出会う2つの誤解を整理しておきます。
誤解①:C1と書かれたら削って詰める治療になる、と思われがちですが──これは違います。C1の段階でも、虫歯の活動性(進んでいるのか、止まっているのか)、清掃状態、唾液の質、フッ素応用の有無などを見て、「いま削るべきか」「経過観察にするか」の判断は分かれます。一律に削るわけではありません。
誤解②:C2なのに痛くないから様子見でよい──これも避けたい考え方です。C2は象牙質まで進行している段階で、痛みがなくても進行は静かに続きます。痛みが出てから動こうとすると、削る量や治療回数が増えていく傾向があります。
つまり、「C1=削る」でも、「C2=痛くないからまだ大丈夫」でもなく、段階に合わせて、いま打てる手を選ぶというのが、私たちが大事にしている考え方です。
ここからは、きど歯科での考え方をお伝えします。
うちの医院では、CO・C1で「即削る」という判断はしていません。まず、ダイアグノデントという虫歯の進行度を数値化する機器を使います。これは、歯の表面に光を当てて、エナメル質の状態を客観的な数値で示す装置です。これを使うことで、「いま削る必要があるのか」「フッ素塗布や生活習慣の見直しで経過を見られるのか」を、目で見ただけの判断に頼らず、データをもとに判断できるようになります。
私が患者さんに一番お伝えしたいのは、ここなんです。
削る前にやれることが残っていれば、そこを優先する。
これは私の口癖です。歯は一度削ると、二度ともとには戻りません。だからこそ、削るかどうかの判断は、できるだけ感覚ではなく数値とエビデンスで決めたい。学校健診の紙だけを根拠に「すぐ削りましょう」とは、当院ではしません。
もちろん、進行が早そうな兆候がある、清掃が届きにくい場所にできている、生活習慣の改善が難しい、などの条件があれば、早めに対応します。「待つ」ではなく「見極める」、そういう感覚に近いと思います。
ここでは、現場の歯科医師としていちばんお伝えしたいことを書きます。
やってはいけないNG行動は、学校健診の紙だけを見て、理由も聞かずにかかりつけの歯科医院に対する不信感を持ち、関係性を切ってしまうことです。これがいちばんもったいないと、私は思っています。
お子さんの口の中の経過を一番把握しているのは、いつも診ているかかりつけ歯科医院です。これまでの萌出時期、過去のCO・C1の有無、過去のフッ素応用、清掃状態の傾向、生活習慣のクセ──こうした情報の積み重ねは、その医院にしかありません。これを捨てて、他の医院でゼロから判断し直すというのは、お子さんにとってもプラスになりにくい選択です。
おすすめの動き方は、健診結果の紙を持って、いつもの歯科医院でこう聞くことです。
「この『C1(またはC2)』と書かれた歯は、具体的にどの歯ですか?うちの子の場合、いま治療した方がいいのか、経過観察でいいのか、根拠と一緒に教えてもらえますか?」
これだけで、お子さんに必要な情報はほぼ揃います。遠慮はいりません。これは保護者として当然の質問です。きちんと説明しない歯科医院の方が、問題があると考えてください。
Q. メンテナンスに通っているのに健診でC1。これは医院のミスですか?
A. ミスとは限りません。学校健診の環境は医院内ほど精密に診られないため、診断がやや厳しめに付くことがあります。また、医院ですでに把握しているCO・C1を、健診で改めて拾っただけというケースも多いです。まずは紙を持って受診時にご相談ください。
Q. すぐに連れて行くべきですか?
A. 「即日」が必須というわけではありません。ただし、放置せず、次のメンテナンスや初診予約のタイミングで紙を持参してください。判定の根拠と今後の方針を、その場で確認できます。
Q. かかりつけがない場合は?
A. これを機にかかりつけ医院を持っていただくことをおすすめします。当院でもセカンドオピニオン的にお話を伺うことは可能です。
CO・C1・C2は段階のサインで、対応の正解は段階によって変わります。重要なのは、紙の文字だけで判断しないこと、削るか削らないかは数値・経過・生活習慣を踏まえて決めること、そして信頼できるかかりつけ医院との関係を切らないこと、この3点です。
そしてもう一つ、ここまで読んでくださった保護者の方へ。
もしいま、手元の学校健診の紙を見て「どうしよう」と感じているのなら、その不安を抱えたままにしないでください。お子さんの口の中のことは、データと記録と話し合いで、ほとんどの場合「今、何が起きて、これからどう動けばよいのか」が見えてきます。
きど歯科(愛知県安城市)では、ダイアグノデントでの数値評価、メンテナンス記録に基づいた経過の説明、そして保護者の方が納得して帰っていただくための丁寧なご相談を大事にしています。多くのお母さんは、学校健診の紙を持って来られて、説明を聞き終わる頃には、来院時の顔が笑顔になって帰られます。
その不安、ここで解消しましょう。学校健診の紙を、そのままご持参ください。
📍 きど歯科(愛知県安城市)
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【参考】
・文部科学省「歯・口の保健管理の実際」
・J-STAGE「学校歯科検診でのCO・GOの診断基準と事後措置のあり方は?」
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